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コラム
4.162018
AI時代に負けない ビズアスリート 1
将来コンピュータが全人類の知性を超える時点のことを「シンギュラリティ」と言います。
アメリカの著名な発明家レイ・カーツワイルがこの概念を彼の著書『シンギュラリティは近い ー 人類が生命を超越するとき』(2005年)で発表して以来、世界中に広まりました。
カーツワイルの予測によると2045年には、シンギュラリティの時代が到来するとのことです。
これは一般のオフィスや家庭で使われているパソコンの能力が2045年には1人の人間ではなく、全人類の脳と肩を並べる時代が間近に迫ってるということです。
そんなパソコンにインストールされたロボット達が身の回りを動き始めたら?と想像しただけでも怖い。
まさにSF映画のような、とてつもない世の中になってしまいそうです。
2045年のシンギュラリティを待たずとも、確実に起こるであろうプレ・シンギュラリティ(一説によると2020年から)は人類のあり方を大きく変えることになるでしょう。
これから10年のうちに、過去の人類が何千年もの間に経験したよりも多くの歴史的変革が起きることは、どうやら間違いなさそうです。
シンギュラリティの話題に伴い「AI時代に、どのような職業が技術的失業し、消滅するか?」というテーマもあちらこちらで論議されています。
AIについても、未来経済についても専門外の私ですが、この手の論議や記事について少し異論があります。
人間のやり方と工夫次第しだいでは「どの職業にも完全な技術的失業などない」という考えがベースにあるからです。
あらゆるレシピを記憶したAIバーテンダーが人間のバーテンダーと同様以上の質のカクテルが作れたとしても、真に優れたバーテンダーのように雰囲気づくりや会話で、お酒の味が引き立つような演出は不可能です。
従ってここでは、どのような職業に関わらず、
「AI時代にどのようなタイプ、志向性のビジネスパーソンが生き残りやすいのか?」
の予測を試みようと思います。
上記のマトリクスをご覧ください。
上下に「外的志向派・内的志向派」
左右に「パターン的・非パターン的」と線を引っ張って、ビジネスパーソンを4つのタイプに単純化してみました。
- 「ホスピタリティ型」
こちらはAI時代に生き残りやすいタイプと考えられます。
バーテンダーの例でも挙げましたが、おもてなしのテクニック、居心地の良さの演出、心の行き届いたサービス精神などは、人間が極めてしまえば、なかなかAIには踏み込みにくい牙城です。
ホスピタリティ型の質の高いビジネスパーソンは、一般的にはAIが俄然強そうなビジネス分野でさえも、一定の立場を保守できることでしょう。
- 「スペシャリスト型」
「離婚」というと、人間にとっては極めてシリアスでAIの出番がなさそうなテーマですが、ヨーロッパ諸国では、AIサイトが年間数百件の離婚問題を扱い、なかなかの成果を挙げているそうです。
離婚を検討している夫婦は、それぞれの年齢、収入、学歴、子供の親権をどちらが担うか等を入力すると、AIサイトは速やかに、夫婦双方に適切な妥協案を提示してくれ、裁判に発展するケースは5%以下との事です。
プリ・シンギュラリティの時代を迎え、AI弁護士の能力が更に発達すると、弁護士への高い報酬を払う依頼者は激減し、技術的失業が法曹界にも及びます。
然し一方、弁護士の業務は、相談者をはじめとする人とのふれあいを通じ、本来は高度かつ繊細なコミュニケーションが求められます。
感受性を豊かにし、相手の表情や微妙な心の動きを受けとめ、ホスピタリティを意識し、問題を整理し、解決に導いていく能力の必要性。
このことは、弁護士業務に限らず、医師、会計士等すべてのスペシャリストに該当します。
AI時代においても「スペシャリスト型」ビジネスパーソンはマトリクス左上の「ホスピタリティ型」の要素を取り込む事により、専門型AIとの差別化が明確となり、より活躍の場を確保できると考えられます。
- 「スタンダード型」
こちらはなかなか苦戦するのではないかと思います。
オフィスパソコン、ITの普及とともに、1990年代以降は、職場において「ノウハウの属人化・質のバラツキ」が敬遠され、「ノウハウの共有化」「標準化」が求められました。
戦後から80年代までは外的志向だったビジネスパーソンが職場でパソコンに向かう時間が長くなり、自然とこの時期から内的志向にシフト変換を余儀なくされたのです。
「スタンダード型」はAIが人間の知能に近づくにつれ(プレ・シンギュラリティ)、最もAIに仕事を取って代わられやすいタイプと言えるでしょう。
然し一方で「スタンダード型」は知性、モチベーションも高く学習意欲も旺盛ですし、啓発とやり方次第では、AI時代を充分乗り切っていくだけのポテンシャルを持っています。
AI時代の企業はこれらの「スタンダード型」ビジネスパーソンをどのような方向性に導いて経営資源の再活性化を図るかが鍵となります。
「スタンダード型」ビジネスパーソンは、右上の「セルフ・リーダー型」の要素を取り入れる事が、AI時代に生き残り、活躍する近道ではないかと私自身は考えます。
詳しくは後述しますが、そのためには「スタンダード型」社員の再活性化の為、「セルフ・リーダー型」ビジネスパーソンの資質をどのように取り入れていくのか体系的な教育等の取り組みが企業にとって必要となります。
この章で、最後に残った「セルフ・リーダー型」のビジネスパーソンについては、次回お話ししましょう。
(次回に続く)